2021.07.12

3回にわたってお話してきました摂食・嚥下リハビリですが、まとめの今回はご自宅でできる嚥下体操と食事姿勢についてお話していきます。

ベッド上でできる嚥下体操

吹き戻し
吹き戻しに負荷をかけた口腔機能維持のための訓練器具で、呼吸や嚥下機能の改善効果が確認されたものもあります。
昔の玩具で、音が鳴るものもありましたよね。

商品名「長息生活」https://kaigolupinus.com/shop/category/item/fukimodoshi/

パタカラ体操
発声しながら口を動かす、「口の体操」のことです。
口や舌の動きが鍛えられて食べ物を上手く飲み込めるようになれば、誤嚥性肺炎を防ぐこともできます。

「パ」の音は、口をしっかり閉じて発音することがポイントです。
「タ」の音は、舌を上あごにくっつくように発音しましょう。
「カ」の音は、のどの奥を意識して発音すことが大切です。
「ラ」の音は、舌をまるめて発音することを意識しましょう。

頭部挙上練習
喉頭の前上方運動を改善して、のどを受動的に開きやすくする運動です。
①床に仰向けに寝る
②足の指先が見える程度に頭をあげる(肩があがらないように)
③1セットを1日3回くらいが目安です

正しい姿勢で食べよう

椅子・車椅子
座面が回転する椅子は楽かもしれませんが、筋力が低下した状態での使用は避けましょう。
足が90度になっていて、カカトが床にきちんと付いているか→踏み台などを利用して足がふんばれるようにすると、姿勢が安定します。
★ご自身でお食事をする場合は、テーブルの高さはひじが90度になるくらいが良いとされています。
高すぎると自分の口に食べ物を運びにくくなり、疲れてしまいます。

ベッド
ベッドの角度は40~60度くらいにして、マットレスが折れ曲がった所に腰がフィットするようにします。
この時に上半身が左右どちらかに傾いてしまう場合はクッションや丸めたタオルを入れて固定します。
頭の後ろにもタオルを入れて、やや前傾姿勢になるように調整しましょう。
この時も足裏はクッションやタオルを当てておきます。

ワンポイント♪

上半身の固定をした後は下半身のポジショニングも忘れずに!
足裏がつくことでお腹に力が入り、嚥下しやすい姿勢になります。

専用の食器を使おう

Uコップ

縁が凹んでいるコップは、顔が上を向かずに飲めるので、誤嚥をしやすい姿勢で飲むのを防げます。

コップの中身を飲み干す際に、顎を上げ、頭を後ろに反らさないと中身が残ってしまう。
なぜなら、コップの縁に鼻が当たるから。
そこで鼻の当たる部分を削ったのが、Uコップです!!

吸飲み

ベッドで横になったままでも水分摂取ができるもので、ストローよりも吸い上げしやすい形になっています。

スプーン

介護用スプーンは、大きすぎず小さめで、スプーンホールが浅く、舌中央に全部乗るくらいのサイズが良いです。私たちは、舌と口唇を使って、食べ物を捕食します。捕食するときの舌は、中央が凹んでスプーンホールのような形になります。この舌中央に食べ物が乗ると、上唇が下りてきて口唇が閉じます。つまり、舌中央の凹みに収まり、口唇閉鎖を阻害しない大きさと形のスプーンが介護用には適しています。

スープスプーンやコンビニ弁当のプラスティックスプーンのような形状は、ホールが深めになっています。こうした形のものは、スプーンを口から引き抜くときに口唇閉鎖を阻害してしまうだけでなく、引き抜き方によっては、顎が上がりやすく誤嚥の原因を作ってしまいます。

カレースプーンのように、スプーンホールが大きいものも舌上に収まらず、口唇閉鎖も阻害するため、すすり食べになってしまい、ムセの原因となるため適していません。また、一口量が多くなりすぎてしまうため、摂食嚥下障害がある人の食事介助には、カレースプーンは用いるべきではありません。カレースプーンと食事介助用スプーンを比較すると大きさの違いがわかります。

嚥下の方法を見直してみましょう

複数回縁下

一口分の食べ物を何度かに分けて嚥下することで、のどの残留物をなくすことができ、誤嚥も防止できます。
一度の嚥下で飲み込みきれずに、口腔内に水分や食べ物が残っている場合に追加嚥下を行います。

交互嚥下

ベタつきやパサつきのある食品と、とろみのある食品やゼリーなどを交互に食べます。交互に食べることで固形物を食べても口腔内やのどに残りにくくなるという効果があります。

3回にわたってお話してきました口腔ケアやリハビリについてですが、ご自宅でできる口腔リハビリはたくさんあります。適した訓練を続けることで誤嚥性肺炎を予防し、安全にお食事を楽しみましょう!