2021.08.16

今回はご自宅での口腔ケアについて3回に渡り詳しくご説明しようと思います。

口腔ケア第1弾は、お口が乾燥する原因と、乾燥してる場合の口腔内環境の危険をご説明します。

摂食・嚥下リハビリテーション②でも口腔ケアについて少し書かせて頂きましたが、保湿が何故必要なのか、口腔内が乾燥しているのか見極めるポイントや、乾燥が進むことで起こる危険をご説明します。

保湿が何故必要なのか

唾液の分泌量が少ない人の特徴

噛む回数が少ない
口の周りの筋肉や歯が衰えて噛む力や飲み込む力が低下すると、食欲が減退し、食事の量や回数が減ったり、やわからかい食事ばかりを好んだりと、噛む回数が減ってしまいがち。唾液は、噛むことによって分泌が促されるため、噛む回数が減ると唾液の分泌量の低下につながります。
楽しく食事できる雰囲気づくりを心がけましょう。
食事前に唾液腺をやさしく刺激するマッサージやお口の体操を行うと、唾液が出て飲み込みやすくなります。
また、入れ歯が合わなくなっていないか、定期的に歯科医に相談をしましょう。入れ歯を作り直すとよく噛めるようになり、「食事がおいしくなった」と感じやすくなります。

ストレスを感じている
「緊張して口の中がカラカラ」。そんな経験をしたことのある人は多いのではないでしょうか。これは、ストレスを感じると交感神経が働いて、ネバネバとした唾液が分泌されるため。
高齢者にとってのストレスは、体調の悪化や人間関係の悩み、痛みをともなうケアなどが考えられます。
リラックスできるようにこまめに声をかけましょう。話を聴いてあげるだけでも、ずいぶんと気分は晴れるものです。時には、レクリエーションで楽しく笑ってもらい、ストレス発散をすると良いでしょう。

おしゃべりすることが少ない
唾液の分泌を促すには、口を動かすことが大切。しかし、高齢になると行動範囲が狭くなって人とおしゃべりをする機会が減るため、唾液が出にくくなります。
日々の介助の合間に明るく声かけをして、おしゃべりを楽しんでもらいましょう。一緒に歌を歌うのもおすすめです。

薬の影響
何種類かの薬を服用すると、その副作用で唾液が減少してしまう可能性があります。
唾液の減少に関連する薬剤は、降圧剤や利尿剤、制吐剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張剤、座薬など数千種類にのぼるともいわれています。
口の中をうるおすジェルやスプレーなど、保湿ケアグッズで乾燥を予防しましょう。もちろん、薬を処方した医師に相談することも忘れずに。

口呼吸になっている
口のまわりの筋肉が衰えると、口をしっかり閉じることが難しくなり、口呼吸になってしまいます。また、鼻炎などの鼻の疾患で口呼吸になることも。口呼吸になると口の中が乾いてしまうだけでなく、ウイルスや細菌が体内に入りやすくなってしまいます。
口のまわりの筋肉を鍛える「あいうべ体操」で口呼吸が改善されることがあります。レクの中に取り入れてみてはいかがでしょうか。鼻に疾患がある場合は、耳鼻科に相談しましょう。

口腔内が乾燥しているのか見極めるポイント

アナタの口腔内乾燥は病気が原因かも?

脱水症
高熱や嘔吐、下痢などにより体内の水分が失われると、人間の体は汗や尿の量を減らして体内の水分を保とうとします。それと同時に唾液の分泌も減ってしまいます。
高齢者は、自分でのどの渇きを感じにくいもの。周りの人が、皮膚が乾燥したりトイレの回数が減ったりしていないかチェックして、脱水症になっていないか確認しましょう。
また脱水をふせぐために、水分をとるように声をかけをしたり、水分が多い食事メニューにしたり、部屋で加湿器を使ったり、日頃から気をつけてあげることも大切です。
日常生活に原因がある場合だけでなく、病気によって唾液の量が減り、ドライマウスを発症する場合もあります。

唾石症(だせきしょう)
唾液の通り道に、唾液中のカルシウム成分が結晶化した結石ができる症状です。結石が大きくなると唾液の流れをふせいでしまいます。

自律神経失調症(じりつしんけいしっちょうしょう)
交感神経と副交感神経のバランスが乱れる病気です。さまざまな症状が現れますが、そのひとつとして唾液の量が減ることがあります。また逆に、唾液の量が増えすぎることもあります。

シェーグレン症候群
遺伝や免疫異常、ウイルスなどが原因で発症する病気です。唾液腺に炎症が起こって唾液の分泌量が低下し、口に強い乾きが起こることがあります。

慢性関節リウマチ
関節が炎症を起こす病気ですが、シェーグレン症候群(前項を参照)が合併して発症することが多く、口の乾きが症状として現れることがあります。

肝硬変
肝硬変が原因で貧血になることがあり、これが唾液の分泌量を減少させます。さらに、腹水のある患者さんに処方される利尿剤の作用によっても唾液の分泌量が減ります。

糖尿病
高血糖になると、体内から糖を出すために尿量が増えます。そのため、体内の水分が少なくなって唾液の量も少なくなります。

腎不全
腎不全の治療として人工透析を行うと、体内の水分が失われ、唾液の分泌量が減ることがあります。また、治療で用いられる利尿薬によっても唾液は出にくくなります。

尿崩症(にょうほうしょう)
尿の量を調節する抗利尿ホルモンが欠乏して尿量が増え、体内の水分が少なくなって唾液の量が減ります。

うつ病
抗うつ剤の副作用だけでなく、うつ病の症状として口の中が乾燥することがあります。

放射線治療によるもの
がん放射線治療で、唾液分泌に関わる頭頸部の神経に放射線が照射されると、唾液線の組織が障害を受け、唾液の分泌が減少します。

脳梗塞、脳出血
脳血管に障害をきたして口の周りの筋肉がまひし、唾液の分泌量が減ることがあります。

乾燥が進むことで起こる危険

最近話しにくくなったり、飲み込みが辛い方は要注意!

ドライマウス

私たちのお口の中は本来、潤っているのが正常な状態です。
主に唾液の分泌や、摂取した水分などで乾燥を防いでいますが、高齢になるとさ唾液腺が萎縮してしまう為、ドライマウスになる人が増えるのです。
適切な対処によって改善される場合もあります。
唾液の量が減ると、口の中が乾いて飲み込みにくくなってしまったり、口を動かしにくくなってしまいます。さらに唾液の量が減るという悪循環に。また女性の場合は、女性ホルモンの分泌量の低下が唾液の量を減らす一因ともなります。
年齢と共に唾液が出にくい環境であることは確かですが、加齢だけが唾液の分泌量の低下を招いているわけではありません。

乾燥した口腔内
唾液トラブルは、ちょっとした心くばりやケアで改善されることがあります。高齢者自身では気づかないことが多いので、周りのフォローが大切。ぜひ、日頃から唾液が出ているかどうかのチェックをしてくださいね。
ドライマウス気味だと気づいたら、素人判断せず、まずは医師の診断をあおぎましょう。安易に「歳だから」「よく噛まないから」などと決めつけてしまうのは禁物。思わぬ病気がひそんでいるかもしれません。病気の可能性がないとわかったら、適切な対処法でケアしてあげましょう。

唾液のトラブルは全身の健康と分けて考えられがちですが、唾液が出ると、口の中が清潔に保たれて虫歯や歯周病を防いだり、食事がしやすくなったりと、いいことがいっぱい。

高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の向上につながり、介護をする側もされる側も、きっと笑顔が増えますよ。