2021.09.20

口腔ケア第2弾は、口腔ケアや嚥下機能の維持をする為の訪問歯科の重要性をご説明します。

摂食・嚥下リハビリテーション②でもご案内した口腔ケアの方法や嚥下についてですが、理学療法士や訪問歯科などの専門家に相談しましょう。

当院では必要に応じて連携を図り、自宅でのケアやリハビリも提案しています。

体のほかの部分と同じように、口の中にもさまざまな老化現象が起こっています。

唾液の分泌量の減少、歯の摩耗、歯茎のやせ、あごや舌の運動機能の低下などによって、高齢者の口の中は トラブルを抱えやすくなっています。

特に介護が必要な高齢者の場合、他人の口の中はなかなかのぞきにくいために、状態が把握し づらいもの。

ですが、気づかずに放っておけばトラブルは大きくなり、食べたり話したりと いう口の機能が衰えて体力が低下したりします。

高齢者に多い口のトラブル

・むし歯

・歯石、歯垢

・歯周病

・口内炎

・入れ歯が合わない

・舌苔

・ドライマウス

・きつい口臭

など

歯磨きは本人にまかせきりだったり、後回しになったりしがちですが、口腔ケアをしっかり行 い、お口のトラブルを軽減させましょう。

口や鼻、胃ろうや腸ろうなど、管を通して経管栄養をしている場合、口から食べていなければ口腔内は汚れていないだろうから、口腔ケアは必要ないと思われがちです。

しかし!

経管栄養中は口で咀嚼をしないために、唾液の分泌が減って自浄作用が低下し、かえって汚れがつきやすい状態になっています。口の中にはもともとたくさんの細菌がいますし、痰などと絡み合って口臭の原因になります。

また、口で食べない状態が長く続くと、咀嚼や嚥下機能の低下や管の汚染などから、誤嚥性肺炎にかかるリスクも高まります。

口の中をきれいにすることだけでなく、唾液の分泌を促したり、口の周りの筋肉を刺激して機能を低下させないためにも、経管栄養中も口腔ケアが必要なのです。

歯が全くなくても、口腔ケアは必要です。舌や頬などに食べカスが残っていたり、痰や分泌物が付いていることがあります。また、口の中が乾燥しているときは、保湿などをおこないます。

注意

・刺激による嘔吐や嘔吐物の誤嚥を避けるために、栄養注入直後は避け、空腹時に口腔ケアを行うようにします。

・誤嚥を防ぐために、座位の場合は前かがみ、寝たきりの場合は横向きで行います。

・栄養チューブが抜けないように、テープで固定してていねいに行いましょう。

ケア

「口腔ケア」には、自分で毎日行うセルフケアと、歯科医師や歯科衛生士などの専門家が行うプロフェッショナルケア(専門的口腔ケア)があります。

●セルフケア

・適切な歯ブラシを使って、毎日(なるべく毎食後)すみずみまできれいにみがく。

・歯間ブラシやフロスなども活用して、歯垢を取り除き、歯石を予防する。

・摂食・嚥下がスムーズになるように、口腔リハビリや口腔体操、マッサージなどで口腔機能を維持する。

・栄養バランスのよい食事をよく噛んで食べる。

・自分で行えない場合は、家族や介護職が行う。

・歯科検診を定期的に受ける。

など

プロフェッショナルケア

・全身状態やお口の状況に見合った口腔ケアのアドバイスを行う。

・歯石の除去など、自分ではできない専門的なケアを行う。

・口腔機能の維持や回復のための指導やケアを行う。

・フッ化物洗口など、口腔トラブル予防のための薬剤の紹介やアドバイスを行う。

・食介護へのアドバイスを行う。など

お口の健康を維持するためには、セルフケアとプロフェッショナルケアの両方を上手に取り入れましょう。

加齢とともに噛む力や飲み込む力が衰えるのは自然なことですが、歯や口腔環境は、正しいケアでいつまでも健康に保つことができます。

他人に口の中を見られたり触られたりすることに抵抗感を覚え、口腔ケアを拒否する高齢者もいますが、そのような場合は、最初から無理強いするのではなく、段階を踏んで少しずつ口腔ケアに慣れてもらうようにしましょう。


口の中が清潔に保たれ、口腔機能が回復すると、食べる楽しみや正常な味覚が戻り、体だけでなく心の健康にもつながります。

生活の質を向上させ、いつまでも元気に自分らしく生活してもらいたいものですね。