2021.06.10
今回は嚥下機能を調べる方法や、検査が難しい方のご自宅での過ごし方についてご説明します。
まずはじめに。
嚥下の検査や訓練にはさまざまな方法があり、また訓練をすすめるスピードや、どの訓練が適しているかは専門家のもとで決める必要があります。
自己流で嚥下評価や訓練を行うのは危険です。かかりつけ医や理学療法士、看護師などに相談しましょう。
嚥下機能の検査(専門的)
「嚥下内視鏡検査(VE)」
細いカメラを鼻から喉へ入れた状態で、普段食べている食形態に近いものや検査食材を食べたり飲んだりしてもらい、喉の動きを確認します。
「嚥下造影検査(VF)」
X線で普段食べている食形態に近いものや検査食材を食べたり飲んだりして喉の動きや貯留箇所を造影で確認します。(バリウムが必要となる検査です)
この検査では主に、唾液などの貯留の有無、食物を飲み込んだ後の咽頭内への食物の残留の有無や気管への流入(誤嚥)などを評価することができます。同時に、嚥下に影響があるとされる声帯の動きをふまえて、今後の食事形態や食事時の姿勢の調節や嚥下訓練を計画し、口から食べる力を回復する方針を決定します。
嚥下機能の検査(簡易なもの)
認知症が進んだ方や通院が困難な方の場合は、上記設備を必要としない簡易な検査を患者さんの状態に応じてできる範囲で選択します。
簡単な検査には前回ブログでもお話している唾液のテストや水飲みテスト、嚥下の音を聴き解析をする方法などがあります。
唾液テスト
口に何も含まずに唾液をゴックンしてみるテストです。
30秒の間に3回以上できると◎
30秒の間に2回以下だと注意が必要です。
水飲みテスト
ごく少量の水を口に含んでもらい、嚥下反射や喉の動きを観察するものです。
シリンジで冷水を3ml計量して口腔底に冷水3mlを注ぎ、嚥下するように指示します。飲み込みを触って確認し、むせや呼吸状態の変化の有無も併せて確認します。さらに嚥下が起こった後に、「エー」などと発声をさせて、湿性嗄声(ガラガラ声)の有無を確認し、湿性嗄声がなければ、反復嚥下を2回追加し評価します。
総合的判断
上記検査に加えて、問診・視診・触診・聴診等で総合的に嚥下機能の評価をします。
確認ポイント
○服用している薬の種類
○病歴や手術歴
○病気による筋肉や骨の変化
○咽頭部(のど)の動き
○認知機能
○食事環境
○口腔内環境
○義歯の確認など
専門家の重要性
食形態や身体状態によって、食事をする際の安全性は大きく変わります。
その都度、状態に適した食事をすることが大切ですが、その判断はなかなか難しいものです。
安全を優先しすぎる食事形態だと筋肉を使わない飲み込みになり、筋力は落ちていきます。
しかし、能力に適していない食事形態や摂取方法では誤嚥のリスクが高まります。
専門家の評価や指導をきちんと受ける事が重要です。
おうちでできること
上記のように、嚥下評価や嚥下訓練は専門家と一緒に進めていくことが望ましいですが、
ここからは皆さん自身がおうちでできることを紹介していきます。
皆さん自身のおうちでのケアもきちんと行って頂くことで、誤嚥性肺炎のリスクをより軽減させることが可能になります
口腔内のケア
- 義歯…毎食後の洗浄
(義歯専用ブラシで綺麗にし、就寝時は外して義歯洗浄剤など使用しましょう) - 歯のブラッシング
(歯の表面、歯と歯の間は歯間ブラシを使用しましょう。
ブラッシングの順番は①上顎奥歯→前歯②下顎奥歯→前歯)
この時にグラグラした歯があったり出血がひどい場合は訪問歯科へ相談が必要です - 拭きあげ (ブラッシングで取れた汚れを綺麗に拭き取ります)
- 舌ケア (汚れがついていたら舌ブラシで奥から手前に掻き出してあげます)
- 拭きあげ (舌ケアで取れた汚れを拭き取ります)
- 保湿 (口腔内専用のスポンジで保湿ジェルを全体へ塗布します)
うがいに注意
日頃水分にとろみを付けた食事をしている人はうがいには危険が伴います。
上を向く喉うがいも、口に含んでブクブクするうがい、どちらもです。
その為に口腔ケア専用のウエットティッシュを使用して拭きあげで仕上げるのが理想です。
どうしてもそれじゃ嫌…とご本人の意思が強い場合にはうつむき加減のまま水を少し含んで吐き出すような、口をすすぐ程度にしましょう。
それでも最後は口腔内にサラサラのお水が残らないように、拭きあげて終わりにします。
パタカラ体操
聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。口をしっかり開けて、唇や舌を動かしながら、できるだけ大きな声で「パ」「タ」「カ」「ラ」の4つを発音してみましょう。
パパパパパパパパ…
タタタタタタタタ…
カカカカカカカカ…
ララララララララ…
と発音してお口の体操をします。
足や手の筋力が落ちないように運動するように、お口の筋肉も落ちないように体操が大切です。
楽しんでやれるように思い出の唄に合わせてパタカラ替え歌もいいかもしれません♪
楽しむことを忘れずに♬
危険をなるべく減らしつつ、食を楽しむための在宅ケアを一緒に考えていきましょう。