2021.05.01
前回、リハビリテーションは、「自分らしい生活を取り戻すためのもの」と学びました。
今回からは、各疾患・各分野の具体的なリハビリテーション方法についてみていきたいと思います。
【脳卒中のリハビリテーション】
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血等により片麻痺や失語症になった方に対するリハビリテーションです。
日本で介護が必要になる原因で認知症に次いで多いのが、この脳血管疾患(脳卒中)です。
脳卒中になると、手足の麻痺や言語障害、摂食嚥下障害、高次機能障害(記憶・思考・認知機能の障害)が起きてしまうことがあります。
今のところ、上記症状の治療の主役は
リハビリテーションです。
「手足の麻痺が起きてしまった場合、
ふたたび動くようになる?」
麻痺が起きた場合に一番気になる部分だと思います。
軽度の麻痺なら、ほとんど目立たないくらいまで回復することもありますが、残念ながら重度の麻痺になると完全に元に戻るのは難しいのが現状です。
しかし、リハビリテーションを行えば手足が再びある程度動くようになることが知られています。それは、脳には柔軟に変化できる能力(可塑性)があり、学習によって担当する仕事を変えることができるからです。
一部の神経細胞が死んでしまっても、隣の神経細胞が仕事を肩代わりします。
これには、地道な反復練習が必要ですが、それを担うのがリハビリテーションなのです。
神経の担当部署が変わるので完全な再現は難しいですが、反復練習により麻痺の改善が見込めるのです。
「脳卒中発症後、いつからリハビリテーションを
はじめるのがよいか?」
これに関しては、「発症直後」から始めるのがよいとされています。
急性期病院でも内科的・外科的治療と並行してリハビリテーションを行うほうが、その後の機能回復によいことが医学的に証明されています。
リハビリテーションの開始が遅れると、筋肉が縮んだり、関節が硬くなったり、心肺機能の低下を起こしてしまいます(廃用症候群)。
「いつまでリハビリテーションを続ければよい?」
脳卒中発症後すぐにリハビリテーションを始めれば、半年程度は大きな改善を見込めます。その後は、機能改善の度合いは小さくなります。それなら半年でやめてもその後は一緒?
確かに身体機能の改善はゆるやかになりますが、半年後以降は改善した機能の維持と、新しい生活様式への移行訓練が必要です。
リハビリテーションを何もしなくなってしまうと、廃用症候群に陥るリスクも上がってしまいます。
半年から1年のリハビリテーション後でも、残ってしまった麻痺と上手に付き合っていく生活様式を構築していく必要があり、リハビリテーション自体も継続することが望まれます。
【運動器リハビリテーション】
骨折や変形性関節症により、主に足の可動制限が起きてしまった場合のリハビリテーションです。
骨折時はなるべく早めに手術を行いますが、手術前後は痛みにより骨折部を動かすことは難しくなります。下肢の骨折の場合は、寝たきりになってしまいます。
ここで問題になるのは、「寝たきり」になってしまうということです。
寝たきりになると、
1週間で10~15%、1ヶ月で約50%もの筋肉量低下が起きると言われています。
その他にも、関節拘縮、心肺機能低下、免疫機能低下、褥瘡、抑うつ、認知機能低下などの症状が見られ、いわゆる廃用症候群の状態へと陥ってしまうリスクが増えます。
高齢者の場合、とくに廃用症候群のリスクが上がります。
廃用症候群に陥ってしまうと、寝たきりの状態になってしまったり、最悪の場合亡くなってしまうこともあります。
それらを防止するのが、運動器リハビリテーションの役目なのです。
骨折手術後は、早ければ手術当日よりリハビリテーションが始まり、翌日にはベット上に座る練習、数日後には立ち上がる練習を行い、4~8日後には歩行訓練が始まります。
その後も再発予防のためのリハビリテーションが必要になります。
また、骨折の原因として一番多い「転倒」リスクを減らす対策も重要です。
具体的には、
・部屋を整理する(つまずく原因をなくす)
・部屋を明るくする(段差に気づきやすくする)
・手すりなどの住環境の整備
・履き物、靴下(脱げやすいもの、滑りやすいものを避ける)
・外出に不安がある際は、なるべく誰かと一緒に外出する
・視力の確認(白内障や緑内障のケア、眼鏡の調整)
・内服薬の見直し(ふらつく原因になっているものはないか?)
・筋力トレーニング
などがあげられます。
上記対策をしても、転倒骨折してしまった場合は廃用症候群を避けるため、なるべく早めの手術・手術後のリハビリテーションを始めることが重要です。
「寝たきりの時間を極力減らす」ことが重要です。
次回は、各疾患・各分野の具体的なリハビリテーション方法についてみていきたいと思います。